『更級日記(さらしなにっき)』(注2)は、平安時代中期に菅原孝標の女(すがわらのたかすえのむすめ)が書いた回想録です。作者の10代から50代にわたる約40年間の人生の軌跡が瑞々しい筆致で綴られています。
物語は、父親の赴任先であった上総国からの旅立ちで幕を開けます。当時、熱狂的な物語ファンだった少女の願いは「早く京へ上って、たくさんの物語を読みたい」という一心でした。
寛仁4年(1020年)、一行は京を目指して出発し、途中で下総国を通過して、現在の江戸川にあたる国境の太日川を舟で渡って武蔵国へと進んでいきます。
太日川を船で渡った時の描写に「川のほとりいとをかしげなり」と記し、広々とした川面や行き交う船に心を動かされた様子が伝わってきます。