死ぬるということ -母の訪問看護記録から-

私の母は平成29年(2017) 1月25日にサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で亡くなりました。94歳、今年が七回忌です。
亡くなるまでの1年分の日記を2020年3月から「老いるということ -母の日記から-」と題して本ブログに投稿したのですが (⇨https://hitakami.takoffc.info/?s=母の日記)、亡くなる直前2ヶ月は何も書かれていませんでした。
本稿では残されていた「訪問看護記録」から最後の2ヶ月の記録(抜粋)を転載します。タイトルを「死ぬるということ -母の訪問看護記録から-」としました。「死ぬる」とはあまり耳慣れない用語と思いますが、前稿の「老いる」に合わせてみたものです。(注1)

母は28年9月中旬に腹痛が続き岩手県立中部病院に入院、胃癌と診断されました。月末の退院時に緩和ケア病棟への転院を希望したのですが、満室で叶わず、空くまでの間サ高住で在宅療養することになり…

■平成28年11月29日(火) 13:30~14:30 (定期)
 血圧:128/71  体温:36.5  脈:75  SpO2:97
○一般状態  食:食べている  便:出ている
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:いつもとかわりないです。  だるいのはあいかわらずです。
  薬は4回のんだ。7時、10時、2時、6時ごろのんでいます。
O:呼吸音良好、腸蠕動音良好。
  下肢浮腫あるも、抹消冷感経度のみ。
  足浴すすめると、してみたいとの事。  ベッド上で足浴行う。
A:状態安定
P:継続
R:気持ち良かった。
図注記:(両脛・足)浮腫あり
○看護の内容  一般状態の観察
 [清潔]部分浴(足)  [医療処置]軟膏処置(クレドポー)
○特記・連絡事項  退院時共同指導説明書にサイン頂きました。

■平成28年12月2日(金) 13:30~14:30 (定期)
 血圧:128/67  体温:36.7  脈:75  SpO2:94
○一般状態  食:がんばって流すように(お茶で)食べている 30分程かかる
  便:今日はまだ、でも出ている
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:はい。いいですよ。
O:内服は4回/日で痛みコントロールしている。
  食欲は無いため、努力の様子を話される。
  両下肢浮腫 左<右  なでるようなマッサージを希望する
  今回も寝たままでのケアを希望する
A:倦怠感あるためあまり起きたくないのか…?  希望にそい気持ちにそい援助
P:継続
R:だるいの。寝たり起きたりが大変。トイレがやっと…。
○看護の内容  一般状態の観察
 [清潔]部分浴(足浴)  [医療処置]軟膏処置(クレドポー)
○リハビリ  下肢マッサージ
○特記・連絡事項  眼科くすり欲しい。 ⇨ケアマネへ報告

■平成28年12月6日(火) 13:30~14:30 (定期)
 血圧:117/62  体温:36.3  脈:78  SpO2:94
○一般状態  食:同じ  今日はカップラーメン買ってもらった。
  便:下剤2Tであり
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:昨日お風呂に入った。着たり脱いだりが大変。疲れてしまって…だるいと言うか。
O:観たいテレビ(朝ドラ、大河)のために居間までがんばって歩行していると。
  箸持つのもトイレに行くのも大変と話す。
A:足浴はしてもしなくても良いと話す。
  トラマール4回/日で痛みは自制内だが、倦怠感・易疲労感が辛い様子。
P:継続
R:たいくつする暇ない。1日があっという間。
図注記:(右下腹)夕食後あたり吐気やかき回されるような痛みある。眠れば楽になる。
    (両脛)エデマ  (胸)呼吸は吐くのがしんどい
○看護の内容  一般状態の観察
 [清潔]部分浴(足)  [睡眠]良(Hr3回、昼寝はしたりしなかったり)
 [医療処置]軟膏処置(クレドポー)

===(中略)===

■平成29年1月18日(水) 10:50~12:00  (定期)
 血圧:118/80  体温:37.1  脈:82  SpO2:94
○一般状態  食:おにぎり(小)、そうめん  便:1/16
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:吐き気もないよ。おにぎり食べている
O:腹痛(-) 重苦しさ(-)  体幹部~大腿部浮腫あり、増強傾向
  昔の旅行した時の夢など よく見ると。
  GE(浣腸)60ml 有形便手拳大あり 排ガス(+)
  口渇あり。 氷摂取される
A:疼痛コントロール良 浮腫は増強傾向
P:継続
R:スッキリした。
図注記:(胸)雑音(-)  (体幹部)浮腫(+)増強傾向
○看護の内容  一般状態の観察
[清潔]清拭(全身)・部分浴(陰)  [栄養]水分補給(氷)  [排泄]浣腸・摘便・オムツ交換
[衣生活]更衣
[医療処置]軟膏処置(グレドポー)

■平成29年1月19日(木) 10:30~12:00  (緊急)
 血圧:132/80  体温:36.8  脈:86  SpO2:95
○一般状態  食:きのう夕~ 殆どたべていない  便:1/18
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:目の前に知り合いがきている。(本人)
  昨日昼以降尿(-)、夜間不眠で日勤者訪室時に受け答えきちんとできない。
  食事もくすりもとれていない(施設職員)
O:緊急依頼あり、訪問する
  訪問時、いつもと同様の状態まで回復していた  下腹部膨満(++)、尿意(—)
A/P:尿閉、Drに状態報告。Fr留置の指示あり。
  挿入し、濃縮尿~混濁尿 400ml流出あり。
R:なんぼかたべれるかも。ゼリー2口
○看護の内容  一般状態の観察
[睡眠](不良)  [衣生活]水枕交換  
[医療処置]フォーレカテーテル交換(留置)  服薬管理(朝食分副服薬介助 11:30)

■平成29年1月20日(金) 13:30~14:50  (定期)
 血圧:105/66  体温:36.7  脈:82  SpO2:91
○一般状態  きのう~ ゼリー、氷  訪問時 氷8ヶ、リンゴゼリー 1個
       昨日尿 6時 550ml  6~13:30 80ml
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:動かれないのが一番苦痛
O:パジャマに吐血の痕跡あり  昨日より浮腫増えている
  会話時息切れはないも、閉眼していると深大性の呼吸となる。
  現在吐気の訴えはなし
A:少しづつレベル↓ 疼痛コントロールはできている。 Jaへ連絡
P:継続
○看護の内容  一般状態の観察
[清潔]部分浴(陰)  [排便]摘便(硬便1個)  [衣生活]更衣
○特記・連絡事項:トラマールは口の中でとけるので、時間通りのませて下さい

■平成29年1月21日(土) 4:18~4:45  (緊急)
 血圧:117/73  体温:  脈:82  SpO2:91~92
○一般状態  Hr 3:30  200ml / 1/20 6:00~
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:う…(大丈夫、とうなずく)。氷。
O:大きく呼吸もしている。 1stラウンド、心配でcall
  (19時20分頃 たまごどうふ1ヶ、ゼリー1/3コ、po
   vdsに夕分トラマールを屯用でpoしているので、また来ると本人に言い、
   その場を離れ、そのまま就寝した。)
  寝息を立てて寝ている。覚醒後、会話スムーズ。
  氷片4ヶ摂取。体交す。
A:苦痛なく休まれていたようす。
P:継続
○看護の内容  一般状態の観察
 体交、氷片摂取解除

■平成29年1月23日(月) 10:45~11:40  (定期)
 血圧:122/85  体温:37.1  脈:95  SpO2:88~90
○一般状態  食:食べていない  便:GE(浣腸)  尿:50ml
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:おなかは痛くないけど、(胸)少し息苦しい  背中もいたいかな
O:会話時息切れ(+) 息苦しさ経度(+) 腹痛(-)  全身浮腫(+)も幾分軽減傾向
  背□痛(+)あり 息子さん背中をさすっている
A:尿量□、苦痛コントロールしていく。
P:継続
図注記:(胸)□IP□(弱)
○看護の内容  一般状態の観察
 [清潔]清拭(全身)・部分浴(陰)  [栄養]水分補給(氷)  [排泄]浣腸・摘便・オムツ交換

■平成29年1月24日(火) 14:15~14:45
 血圧:106/68  体温:36.9  脈:96  SpO2:とれず
○一般状態  37.7℃だった。HM=50ml
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
S:はーい 苦しくない
O:呼吸やや努力ぎみ。  意識OKも傾眠がち  上肢のエデム(+) 下肢エデム(+)
P:点滴 オキファスト 47.9mlでスタート  0.1ml/h  ロックアウト15分
図注記:(右前椀)エデム
 ※かぎはおしいれ
○看護の内容  一般状態の観察
 [医療措置]点滴

■平成29年1月25日(水) 10:35~12:00 (定期)
 血圧:87/55  体温:36.6  脈:89  SpO2:測定できず
○一般状態  食:とっていない  便:尿 60ml
○S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)・R(反応)
O:今朝までレスキュー回数8回。
  痛み問うと顔を横にふる。息苦しさ問うと軽くうなずく。CADDレスキュー施行
  深々性呼吸、死前喘鳴(+)  オムツ交換施行、(軟□□自然排便)あり。
  次第に下顎呼吸となり、スタッフの見守る中静かに息をひきとる。
  ※11:23呼吸停止確認
  息子さん、主治医に連絡する
  エンゼルケア施行する。
○看護の内容  一般状態の観察
 [清潔]部分浴(陰)  [整容]口腔ケア  [排泄]オムツ交換

〈死亡診断書から〉
午前11時25分、花巻市石鳥谷町 イーハトーブ昂の森(注2)で死去(94歳5月)
直接死因:胃癌、 発病から死亡までの期間:約4ヵ月、 影響を及ぼした傷病:癌性腹膜炎

[備考]
(注1) 死ぬる
:調べてみると〈[標準語]死ぬ。鳥取弁には標準語にはない「ナ行変格活用動詞」がある。〉とか〈「死ぬる」は方言ではあるが、誤った形というわけでもないと思う。〉とありました。
(注2) イーハトーブ昂の森(たすくのもり):㈱T・S・Kが運営したサービス付き高齢者向け住宅。東日本大震災復旧支援プロジェクト事業として建設され、2012年10月に開業。
2017年2月(?)に運営主体が㈱ヒトタ商事に移り、名称が「イーハトーブぬくもり」に変更された。

(2023.6.1掲)

「死ぬるということ -母の訪問看護記録から-」への2件のフィードバック

  1. お母様のご冥福をお祈りいたします。

    見ていただけることを願って最新の記事にコメントさせていただきます。
    大学で北上川の変遷について研究しています。
    もしよろしかったらお話を聞かせいただけませんでしょうか?
    ご連絡お待ちしております。

    1. 拙ブログにお立ち寄り頂き有難うございます。
      私は北上川に特別詳しいわけではありません。
      このブログにアップしたことが知っていることのほとんどです。
        ⇨ https://hitakami.takoffc.info/?s=北上川
      何かございましたらこちら⇩までご連絡下さい。
        sato.tak@takoffc.info
      草々

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