明治新撰規矩的当図解

規矩的当図解自  序

本書は専ら規矩的当図形(キクテキトズカタ)を画き、又算術にて其の理を解く事を示す(注1)。都(スベ)て規矩準縄は水平と縦水に勾配を引きて構成せる勾股玄(コウコゲン)に起れり。其の勾股玄は算盤(ソロバン)の三四五(サンシゴ)(注2)則ち曲尺(カネジャク)の起原なり。故に算術は方円平直に起り、方円平直は規矩準縄より起る。而て規矩準縄を以て為さざれば、真正の方円平直を求る事能(アタ)わず。

方は矩也、矩は曲尺也。曲尺の正理に応ぜざるものは総て算理に適うことなし。故に算数学の原理は曲尺に止るものなり。而て曲尺に拠り勾股玄及中勾・長玄・短玄を以て諸々の勾配を求ると雖(イエド)も、算術にあらざれば其の理を極むることを得ず。故に矩を画き算術にて其の理を極め、以て諸々の建築等為し又曲尺を以て加減乗除及び開平方、開立方等至るまで算盤を用いずして自在に量る。然と雖も毫絲以下の小数に至りては聊(イササ)か量り難き事もあれども、木匠の術に於ては毫絲以下小数を加減し之を略して其の用足るものなり。実に曲尺は木匠の最も第一の至宝也。

大正二年丑癸九月  藤原金次郎述
(陸中国稗貫郡矢澤村)(印)

 

帝国大学より拝書 写

左記之書籍本学へ御寄贈相成正に領収 御厚意深謝致候 即本学附属図書館に於て永く之を保存し参考に供すべく候  敬具

明治三十七年九月十五日
東京帝国大学総長 理學博士 山川健次郎 (印)
藤原金次郎殿

⇒「明治新撰規矩的当図解 全

規矩図解奥付

[参考]
(注1) ⇒「規矩術」
(注2) ⇒「三四五」

(2014.5.31掲)