トルコのウイグル人

昨年12月の初めに見も知らぬ人からこんなメールが飛び込みました。

《 佐藤様
 はじめまして。〇〇と申します。
佐藤様が運営されている「人そして川」というWebサイトに掲載されている2015/06/12の記事を読ませていただきました。
 私は過去、イスタンブールでここに紹介されているエリキンさんに大変お世話になったのですが、その後、ろくに連絡を取れずに過ごしてしまいました。
佐藤様が作成された文章を見つけ、今現在、エリキンさんがどう過ごされているのか気になり、こうしてメールをさせていただきました。
2015年6月ごろに、クアラルンプールにいらっしゃることを記載されていますが、2020年12月現在はどうされているのか、これからどう活動されるのか、一度お聴きしたいと考えております。
 ただ、直接お話するのにも気を使わないといけない情勢ですので、まずは佐藤様にお話を伺うことは可能でしょうか。…》

エリキンさんはカシュガル出身、イスタンブール在住のウイグル人です。私は彼と知り合って20年以上経ちますが、ここ数年はメールのやり取りもなかったので、近況伺いがてら彼の意向を聞こうと思いメールを送ったのですが… なかなか返事が来ない。アドレスを替えたりして何度か送っていると、1週間ほどして返事があり、何とか彼の同意を得て、〇〇さんと彼を繋ぐことができました。今彼らはWhatsAppで連絡し合っているようです。
私はそれまでWhatsAppなんて知りませんでした。

彼の返事の中にこんなことが書かれています。

《… 2015年東南アジアに行き、難民救援活動をして、殆どの難民をトルコに入国させました。
タイ当局は109人の難民を中国に引き渡してしまいました。残念ながら。まだ40数人の同胞が収監されています。
そのほかの同胞は無事にこちらに来られて安心しました。
東トルキスタン難民はこちらに来てから、人生を新たに計画し、暮らしていかなければならない。財産などは殆ど持ってこられなかったので、滞在許可から、家賃、食品、衣類、交通、教育、資料等、様々な問題に直面して、困る人も少なくありません。

で、2014年から難民支援活動をしはじめて、2016年1月27日公式に世界被抑圧者及難民協会を設立し、東トルキスタン難民を主に、西トルキスタン(カザフ、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、アフガニスタン)から亡命してきた人々を支援してまいりました。幣協会に救援を求めてくるアラビア人もいます。シリア人、イラク人、コーカサス人、チェチェンなども。
今は子供も含めて約1万人ぐらいの難民がうちの協会に来ております。食品(小麦粉、お米、油、副食品)を主に、衣類、医療支援、教育などしております。忙しい毎日を過ごしております。
殆どの時間は難民支援活動に使っております。残りの時間は通訳、ガイドなどのバイトで、家賃、家族の費用、協会の細かい支払いなどを負担しております。 …

中国ウィルスのせいで、トルコの旅行をはじめ、工業、商業、社会活動、難民支援などすべてが影響を受けております。最近まで感染者は少なかったが、最近1日3万人ぐらいに伝染しているとのことです。死亡者は少ないが。 うちの家族は大丈夫でした。
今までにウイグル人は中国ウィルスで数人亡くなってしまいました。年齢が55-80歳の人が。
家と難民協会は近いです。協会では、副会長を担当しておりますが、会長はトルコ人(69歳)。ほとんど来ない。ほとんど私が負担しております。
生活はコロナのせいで、通訳のバイトも数なく、時々赤字の生活です。裁判所、公証役場などで通訳の仕事がありますが、生活がぎりぎりという感じですね。…》

その後送って来た写真の中から何枚かを載せます。

事務所前で支援品を配る
エリキンさん

支援品を受取りに来た難民

支援品保管倉庫

年が明けてから来たメールには次のようにありました。

《… 年末年始は去年の総括や難民支援の仕事で忙しい毎日でした。御返事が遅くなり申し訳ございません。
小麦粉、お米、油、佐藤、毛布、子供達の冬用衣類、卵などを支援しております。あとはたまたまお肉も。断食とクルバン祭の時に羊や牛肉も配りますが、普段はお肉はほとんど支援できません。高い。

難民妊婦の出産から外科、内科など難民の治療サポート、子供達の教育支援、滞在許可証の取得、延期、国籍申請、教育や治療、生活支援サポート、法的弁護などいろいろな問題を解決してあげようと頑張ってまいりました。
難民支援品を患者、新しく出産した女性の家や、年配の家、子供達の学校(クラスというか)まで届けてあげています。大部分の難民は事務所に取りに来ます。
睡眠時間は日本の方より短いと思います。
ほかの協会や基金会と協力して支援活動をする時もあります。…》

これらのメールを見ているうちに、エリキンさんの活動の様子をブログで紹介しようと思い立ち、彼に了解を得ようとメールを送りました。そして快くOKしてもらい、次の事を日本の皆様に伝えて欲しいとのことでした。

《2002年9月トルコに亡命した後にイスタンブールで暮らしている。》
《2016年1月27日トルコ政府の許可を得て「世界被抑圧者及難民協会」を設立し、 東トルキスタンと西トルキスタンからトルコに亡命した難民や移民に支援活動をしている。》
《約1万人の難民に食品、衣類、生活用品、毛布、治療サポート、教育支援活動、主にウイグル人難民の滞在許可や国籍の取得、居留証延期、法的弁護、難民の書類の翻訳、通訳などを無料でしている。》

更にこのメールには、彼の思いのたけが縷縷(るる)記されているのですが、こちらについては改めて彼の了解が得られれば、載せようと思っています。

さて、私が初めてエリキンさんに会ったのは1997年、24年前のこと、カシュガルでツアーガイドとしてでした。あれからの二人の交遊録がこちらにあります。

(2021.2.2掲)

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